天皇名の暗号/関 裕二

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著者 関裕二(せき・ゆうじ)
1959年千葉県柏市に生まれる。仏教美術に魅せられ、足繁く奈良に通ったことをきっかけに日本古代史研究をはじめる。近著に『天皇と歴代遷宮の謎』(PHP研究所)『伊勢神宮の暗号』(講談社)『蘇我氏の正体』(新潮文庫)など。

歴史を抹殺するために編み出された「国風諡号」と、ゆがめられた歴史を告発するための「漢風諡号」。天皇の名は古代史の謎を解く“暗号”だった!―いま最も読まれている古代史作家による新・天皇論。

■諡号には2種類

天皇が薨去した後におくられる〈諡号〉には、国風諡号と漢風諡号の2種類がある。しかし、『日本書紀』には「神日本磐余彦尊」「天渟中原瀛真人天皇」といった名称しか出てこない。それは、「神武」や「天武」といった漢風諡号は、『日本書紀』編纂後の8世紀後半、淡海三船という学者によって撰進されたものだからだ。

関裕二はまず、淡海三船の素性から、彼が漢風諡号に仕込んだ暗号の存在を指摘する。すなわち、国風諡号は、『日本書紀』が歴史を抹殺する過程で編み出したものであるのに対し、漢風諡号は、『日本書紀』によってゆがめられた歴史を告発するために考え出されたものではないか、という推理だ。

■諡号分析が歴史を覆す!

「神」の字をもつ3人の天皇の神武・崇神・応神の関係性を大胆に再構成することで日本神話を裏返し、「武」の字をもつ天皇と武内宿禰の共通項を解釈しなおすことで古代史の闇に光を当てる。通説で語られる歴史を覆す瞠目の結論は必読!1章を割いて、初代神武から五十代桓武までの古代天皇を列伝形式で紹介する。諡号の一覧なども充実。古代史を知る上で必読の一冊!


天皇名の暗号 目次

  • 古代天皇系図
  • 古代天皇諡号一覧
  • はじめに
  • 第一章 漢風諡号の不思議
  • 第二章 淡海三船の秘密
  • 第三章 タラシヒコと八十嶋祭の謎
  • 第四章 高天原広野姫天皇の陰謀
  • 第五章 古代天皇列伝
  • おわりに

はじめに
歴史は、光と影からなる。
歴史を隠そうとする者がいれば、それを暴いて見せようとする者が現れる。
この「隠し、暴こうとする者どもの葛藤」をいかに読み解くかが、古代史の神髄である。
西暦七二○年、正史『日本書紀』は編纂された。この文章は、七世紀の壮絶な政争を勝ち抜いた者どもによって記された。そして彼らは、歴史の核心部分を闇に葬ったのである。
もちろん、政権交替の正当性を証明するための歴史改竄であり、権力者ならば、誰でも考えつくことであろう。
では、『日本書紀』によって葬り去られた真実の歴史は、二度と復元することはできないのだろうか。そうではあるまい。隠す者がいれば、暴く者が現れるのは、世の常なのである。そして、多くの場合、私的な文書の中に、こっそりと貴重なヒントが隠されているのものなのだ。
平安時代に編まれた『竹取物語』が、典型的な例だ。ここに登場する貴公子たちが、八世紀初頭の高級官僚にそっくりだ、という指摘がある。しかも彼らは、かぐや姫にコケにされている。もっとも辛辣に批判されているのは、藤原氏の繁栄の基礎を築いた藤原不比等によく似た「くらもちの息子」なる人物である。
藤原全盛時代に、藤原氏をコケにしたのが『竹取物語』であり、そのストーリーの背後に、数多くの「証言」が秘められているのである。
『万葉集』も例外ではない。さり気ない歌の配列の中に、大きなヒントが隠されている。漢詩集『懐風藻』も、『日本書紀』から抹殺された貴重な記事が、いくつも飛び出してくる。これらの文書は、『日本書紀』を読んでいても見えてこない歴史の裏側を、必死になって、しかも巧妙に、後生に伝えようとした文書なのである。
ただし、もっと大胆な暗号が、われわれの目の前にぶら下がっている。それは、「天皇の名」なのである。
天皇の名には、諱(いみな)と諡(おくりな)がある。諱は生前に呼ばれていた名前、諡は、死後に与えられた尊称であり、「贈り名」である。また、諡には、国風諡号(和風諡号)と漢風諡号の二種類がある。(中略)この国風諡号と漢風諡号、単純な「美称」「尊称」と信じられているが、大きな誤解ではなかろうか。
すなわち、国風諡号は「歴史を抹殺する過程で編み出された名」であるのに対し、漢風諡号は、「『日本書紀』によってゆがめられた歴史を告発するために考え出された名」ではないかと思えてならないのである。
天皇の名にどのような秘密が隠されているのか……。その暗号を、解き明かしていきたい。

(本文 はじめに より)

 

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